ポートランドのブルワリー
1980年代から始まったポートランドのクラフトビール・シーンはまさにビール天国
1980年代初めより、この街のブルワリーは果敢にチャレンジを重ね、近郊のウィラメット・バレー産のホップや大麦、ブル・ラン分水嶺の水といった良質な素材を活かしてクラフトビールの世界を切り拓いて来ました。ひしめき合うビールパブと、毎日のように開催されるビールイベント。「ビアバーナ(ビール天国)」というニックネームも納得できます。
クラフトビールのパイオニア達
ポートランドの現在のビールシーンは、1984年にブリッジポート・ブルーイングBridgePort Brewing(現在閉鎖)とウィドマー・ブラザーズ・ブルーイングWidmer Brothers Brewingがパール地区にオープンした時から始まりました。両者とも1860年代にヘンリー・ワインハード醸造所Henry Weinhard’sが設立された所から程近い立地でした。
1985年には、マクメナミンズMcMenaminsがサウスイーストにオレゴン初のブルーパブを開きました。その最初の店ヒルズデール・ブルワリーHillsdale Breweryは今でも地元で親しまれています。現在、マクメナミンズは米国北西部に50軒以上の店舗を持っており、歴史的建物をリノベーションしたちょっと風変わりで面白いパブの雰囲気でもよく知られています。
ポートランドに進出したブルワリー
90年代からは州内の有名ブルワリーが次々にポートランドに出店しました。1989年創業、オレゴン・コーストのニューポート市に本拠を置くローグ・ブルーイングはRogue Distillery & Public Houseをポートランドに展開。
セントラルオレゴンの町ベンドの2社のブルワリーもポートランド支店をオープン。1988年創業のデシューツ・ブルーイングDeschutes Breweryは2008年にパール地区に出店、また、2015年にはデシューツの近くに急成長の10バレル・ブルーイング10 Barrel Brewingがオープンしています。
第二の波
ポートランドのクラフトビール業界では、新興でもやる気のあるブルワリーは歓迎されます。1990年代にはいくつもの参入者が現れ、ビールシーンを活気づけました。1994年創業のラッキー・ラブラドール・ブルーイング・カンパニーLucky Labrador Brewing Companyはクリーミーでコクのあるブラック・ラブ・スタウトをはじめとするビールを作り、複数店舗を開くまでに成長しました。いずれもドッグ・フレンドリーなお店です。
近年では、2008年創業のホップワークスHopworksが、オーガニック・ビールの幅広いセレクションで大きな称賛を得ています。この「エコ・ブルーパブ」は醸造所やパブ内を100%再生エネルギーで賄っています。おいしいピザがラガービールとよく合います。
新顔のブルワリー
最近でもポートランドには次々に新しいブルワリーが登場。各ブルワリーは、より特殊なスタイルや技術を追求していますが、単に風変わりなのではなくビールに賭ける情熱とその成果はそれぞれが賞に値すると言える素晴らしいものです。
ブレイクサイド・ブルワリーBreakside Breweryは、Breakside IPAをはじめとする美味しいクラフトビールの造り手です。このIPAは2014年Great American Beer Festivalのアメリカン・スタイルIPAで金メダルを獲得しました。他のビールもとてもクリエイティブで、たとえば2013年の創業3周年記念ビールのDuck Duck Drunkは、地元産の鴨肉100ポンドをチョコレート・スタウトで漬け込んで仕上げたビールです。
グルテン・フリー・ビールに特化して、受賞歴もあるグラウンド・ブレイカー・ブルーイングGround Breaker Brewing。ウィラメット・バレー産の栗を焙煎して麦の代わりに使用したIPAやダーク・エール、コーヒーやカボチャなどの地元産の素材を使用したエールビールを、ぜひ試してみてください。グルテン・フリーの食べ物をだすグルメ・パブ、グラウンド・ブレイカー・ガストロパブが併設されています。
ノースイーストで地元の人に愛されているマイグレーション・ブルーイングMigration Brewingでは、IPAやピルスナーを作っています。新しくできたNorth Wiliams Avenueのお店には広いパティオにビール好きが集まります。
ジャイガンティック・ブルーイングGigantic BrewingはポートランドのベストIPAを目指しています。既存のルールを無視し、ベテラン・ブルワーの手腕を生かして、地元産の極上ホップを使った独創的なビールを生み出しています。たとえば、ペールエールのCatch 23ではワシントン州ヤキマのロイ・ファームの実験的なホップのうち527番ホップを生かした味になっています。
ベアリック・ブルーイングBaerlic Brewingでは定番、季節限定、そして一回限りの単発レシピのビールが合わせて10種類。クリームエールやスタウトのような正統派ヨーロッパスタイルのビールとともに、主力ビールのIPAはたくさんのローカル・ホップを使用して、彼らのモットーである「身近で親しいビール」を表現しています。
エクリプティク・ブルーイングEcliptic Brewingは比較的新しいブルワリーですが、創立者は超ベテラン。マクメナミンやデシューツ、フルセールといった有名ブルワリーを経てきた伝説的ブルワー、ジョン・ハリスです。彼はデシューツのMirror Pond Pale Aleという傑出したレシピを生み出した人でもあります。エプリクティクとは天の黄道のことですが、ハリスは天文学に興味があり、このブルワリーでは星がテーマのビールが提供されます。
ノース・ポートランドのランドマーク、セント・ジョンズ橋。そのたもとにあるオクシデンタル・ブルーイングOccidental Brewingは、ヨーロッパスタイルのビールに特化したブルワリー。テイスティング・ルームに立ち寄って、おいしいaltbierやkolschを味わってください。
フランスとベルギーのファームハウス・スタイル・ビールのコンセプトを受け継いだアップライト・ブルーイング Upright Brewingは、ポートランドのクラフトビール・シーンの隠れた宝石的存在。一見そっけない地下のテイスティング・ルームですが、味わい豊かなビールを味わえる場所。パシフィック・ノースウエスト産の材料を最大限に生かして少量生産の限定ビールをつくっています。
ヴォンエバート・ブルーイングVon Ebert Brewingは2018年の創業とともに、ポートランド市民の心をつかみました。革新的なビール造りとおいしい料理、そして屋根付きパティオが人気です。リトルビーストLittle Beastは2017年に郊外のビーバートンで誕生。すぐに人気がでて、翌年にはポートランド市内のビジョン・ストリートに支店を開店しました。創業者は「人生と仕事のパートナー」カップルの Charles Porter とBrenda Crow。さわやかな風味ながら複雑なフレーバーを持つミックス発酵ビールを専門としています。
どのビールにするか?
これほどたくさんの選択肢があると、選ぶことが難しくなるのが当たり前。クラシックなクラフトビールから迫るか、革新的な今までにないビールを作っているところに行くか。一つの解決法は、これら全てがそろっているタップルームに行って、全て試してみることです。
ロイヤル・リージョンLoyal Legionにはオレゴンのブルワリーからのビールが99種類もそろっています。オレゴン州各地のビールをサンプルするのもよし、ポートランドのブルワリーだけにこだわってみるのもよし。エレガントな内装のこのバーでは、カクテルや手ごろなおつまみもそろい、ビール好きでなくてもゆっくりと時を過ごすことができることうけあいです。